映画原作として便乗出版された薄っぺらな小説。 ピンチョン原作の探偵映画に出ていた役者と、 映画の内容紹介、 「本当はここにはいなかった」 という書名の三点に惹かれて読みはじめた。 ほんとはこういうのはKindle版がいいんだけどなぁ、 と思いながら、 まだ出ていなかったので印刷版を買った。 本国では最初はやはり電子版で出版されたらしい。 「本当はここにはいなかった」 というのは人身売買された少女のことかと思ったのだけれど (別の人生を生きていたはずだ、 という意味で)、 この世に生を受けるべきではなかった、 と感じさせられている主人公のことだった。 国際的に人身売買が大きな問題とされているにもかかわらず国内ではたいした問題とされない国に暮らす人間としては、 大いに関心を持って読んだ。 結論からいえば 「えっこれだけ?」 という感じだった。 プロットが人間を語るための口実にすぎないノワールというジャンルにおいて、 とりあえずのプロットだけが語られた印象で、 主人公はまぁそこそこちゃんと書かれているけれど、 肝心の被害者は道具立てにすぎず、 はかない影のように感じさせられる。 虐殺を夢想した主人公が倒した敵の止血をしてやったりするおもしろ描写にも必然性がない。 普通はとぼけたユーモアを感じさせたり、 あるいは主人公の心理を描くための見せ方だったりするものだけれど、 短すぎて意図がよくわからない。 なんかもうちょっとどうにかなるんじゃないの、 と思わされる。 おそらくその食い足りなさが監督に脚本を書かせたのだろう。 短いなら短いなりに簡潔で無駄のない、 研ぎ澄まされた鋭さを感じたかった。 映画は傑作。
