十年ぶりのプリースト。 それなりに楽しんで読んだ。 なるほど集大成の評判どおり彼特有のモチーフをつなぎあわせてある。 しかしつなぎあわせる要素、 SF的な天才科学者のよくわからない理論によるSF的な兵器、 に求心力がない。 もやっとした書き方しかされていない。 それぞれの物語がただ、 異なる場所で撮影した写真のように、 ばらばらのまま提示してある。 ロベルト・ボラーニョ 『2666』 もまた同様の、 つながりそうでつながらない物語で、 最後まで答えが出ないあたりも似ていたけれども、 連続強姦殺人という暗い現実味が力強く、 それぞれの物語を結びつけ読者を惹きつけもしていた。 『隣接界』 のSFや寓話的世界にそうした力は感じられない。 そもそもそうした意図がない。 一方で、 プリーストらしい悪意の描写には、 あいかわらず病的な現実味が感じられもした。 総じてよくわからない、 というのが感想で、 おそらくそうした 「よくわからない」 物語を提示するのがプリーストの意図だったのではないか。 しいて意味を見出すなら、 撮ることで失った妻を撮ることで取り戻す話、 といったところだろうか。
