年末年始に読んだ。 ミャンマーや香港で起きていること、 ウクライナで起きていること、 あるいはCOVID-19を巡るあれこれがちらついて古い絵空事とは思えなかった。 女性の描き方も当時の男性としてはまっとうだ。 権力や世間の価値観に流されずに物事を公平に観察する作家だったのだろう。 着想やプロットの風刺といい、 カメラアイ的な客観描写と意識の流れが自然に溶け合う語り口といい、 皮肉に満ちた人物描写といい、 他人とは思えないほど共感できる書き方がされている。 逆にいえば、 政治によってひとびとの暮らしが抑圧された時代に書かれ、 発禁になった小説がこれほど自然に共感できる一方で、 現代の日本で出版される小説にまるで共感できないのは、 何かよくないことの表れであるような気がする。 思い過ごしならいいのだけれど。
