父を撃った最後の銃弾は永遠に身中に留まる。 あらゆる場所やかかわりを通過しつづけた歳月にとどめを刺すように。 味わいのある文章といい練られた構成や伏線といい、 とてもよかったのだけれど、 優等生的な感じがして素直に絶賛できなかった。 巧い小説はきらいじゃないんだけどな。 巧さが鼻につく⋯⋯というほど悪くはなかったのだけれど、 素直に感じ入れなかったのは、 結局のところこの小説が、 親子の絆をうたいあげる性質の物語だったからだと思う。 きわめて上手に書かれたファザコン小説というか。 おれは異常者である両親に虐待されて育ち、 だれにも愛されたことがないので、 正常な人間の営みが理解できない。 そのせいかもしれない。 タイトルロールの 「父」 は、 育ちのせいでおもに犯罪で生計をたててきた人物なのだけれども、 おれの父のような社会病質ではない。 至極まっとうな考え方をする。 撃ち方を娘に教えるくだりなんか、 生きる術を伝えようとする真摯さがあって、 なるほど親が子にしてあげられるのは、 人間として次の世代にそのような態度で接さなければならないのは、 そういうことなのだと思わされ、 絶望を教えて生きる術を奪おうとしたおれの父との隔たりに気が遠くなる。 優等生の朗読する親自慢の作文を教室で聞かされたような気分だ。 この記事のために画像検索して、 著者の風貌がおれが想像した主人公の少女そのままだったのに驚かされた。 父親を愛している女性には響く物語ではないかと思う。 知らんけど。
