昨年秋に読んだ。 邦訳された当時は図書館で手にしただけで読まなかった。 『チャンピオンたちの朝食』 のようにタイポグラフィが凝っていた印象がうっすらあるのだが電子版でどのくらい再現されたのかわからない。 タイポグラフィや図版で読書体験をコントロールしようとする表現様式はウェブや電子書籍に向かない。 どの環境でも表示するためには明朝とゴシック、 太さと大きさくらいしか指定できないし、 指定したところで閲覧環境や設定次第でどうとでも変わるからだ。 物語は法螺話寄りのロードノヴェルで、 家族の謎めいた歴史を探る探偵ものでもあり、 その顛末を若者が語る青春ものでもある。 ちょっと魔術的リアリズムっぽいところもある。 最大の魅力は語りにあって、 おそらく原文では 「未熟な学習者による英語」 が再現されているのだろうけれども、 よくもまぁうまいこと 「妙な日本語」 に移し替えたものだと感心する。 独特のいいまわしは癖になり真似をしたくなるほど。 登場人物 (犬も含めて) も魅力的だ。 印象に残ったのはそこまでで、 読んで数ヶ月経ったいまではどんな話だったかもう思い出せない。 書く/語るということについての物語だった、 としか憶えていない。
