おもしろいかつまらないかでいえば、 おもしろかった。 読む価値があるかと問われたらないと答える。 いわゆる 「変な話」 なのだがもっと変な話をおなじくらいうまく書くアマチュアを何人か知っている。 91年頃のSFマガジンにはこんなのがいつだって何本も載っていた。 それがあたりまえだった。 カルトの事件と西の街の震災があってから日本人は見慣れないものや異なる価値観を警戒するようになった。 それから四半世紀あまりでSFは恵まれたひとたちがそうでないひとたちを貶めるジャンルに変質した。 仕事のできないやつが混乱に陥れた世界を仕事のできるやつが救う話なんてだれが読むものか。 ファンがスランだった時代は遠い昔になった (註: 「ファンはスランだ!」 は定型発達者から迫害されるミュータントにSFファンが自分たちをなぞらえた標語)。 あの頃を知っている人間にいわせればこの本はそんなにありがたがって読むほどのもんじゃない。 おなじくらいおもしろい何本もの別の話と一緒くたにSFマガジンに載っていて、 あー今月もおもしろかったと読み棄てられるのにちょうどいい種類のおもしろさだ。 つまらなくはないんだよ。 装幀だって素敵だ。 でもざらにあるはずのおもしろさであって、 そんなものにさえ珍しい価値が生じてしまうほど現代の読書はつまらなくなった。
