ブッカー賞といえばピーター・ケアリーやグレアム・スウィフトが思い浮かぶ。 読んでまちがいのない傑作、 名作ばかりの印象があった。 けれどもこれはまったく好みではなかった。 ある女性についての物語なのだけれども、 そのひとの姿がまるで見えてこない。 ひとの人生や人格は結末のわずかなページだけであっさり片づけられるべきものではなかろう。 鼻持ちならない気取った小説だと思った。 若き日の恋人はたしかに鼻持ちならない女であったろうけれども、 そういう女とつきあう主人公も大概だし、 知的障害者の扱いにはあきらかに見下した感じがあって生理的になじめない。 たしかにきれいごとではすまないだろうけれども、 きれいごとではすまない側の人生に立つのが小説というものではないのか。 人生のほとんどを社会の規範にのっとってそつなく生きてこられたひとが、 そのようには生きられなかった人生に対して、 完全に他人事として眉間に皺を寄せてみせるかのような、 そんな感触がこの小説にはあった。 恋愛小説ではあるだろうし、 その気になって読めば推理小説のようでもあるのだけれど、 それならもうすこし謎に深みがあってほしい。 解き明かすことに何の痛みも切実さもない。 関係のない他人からおもしろ半分で家族の弱みを暴かれたかのような気分になる。 読んでいるあいだも不愉快だったし後味も悪い。 ブッカー賞ねぇ⋯⋯。
