彼の本でどれか一冊薦めるならだんぜんこの本。 読み返してから書くつもりだったのですが、 先延ばしにしてばかりで、 いつになるかわからないので、 四半世紀前の記憶を頼りに書くことにしました。 職業作家になろうとしていた時期、 当時刊行されていた彼の長編はほとんど読んだのですが (『呪われた街』 だけ図書館の本があまりに汚かったので未読)、 そのうちでいちばん好きです。 書くことについての話だからでしょうね。 書けなくなった作家が泣きながらWordのショートカットをPowerBook G3 (だったと思う、 たしか) のゴミ箱に放り込む場面が印象に残っています。 おれたちの国はかつてよそのひとたちや、 よそから連れてきたひとたちにひどいことをしたわけですが、 米国にもそのようなことがあって (もともと住んでいたひとがいた土地ですからね)、 その恨みが亡霊となることがあるんだなと、 この本ではじめて知りました。 だれもが視線をそらして 「なかったこと」 にする話題を、 真っ向から書くのが彼の好きなところです。 野球帽かぶった米国白人でありながら、 いや、 だからこそなのかな? この時期の彼はたぶんアーヴィングに憧れていたのではないかと思いますし、 当時、 村上春樹は、 アーヴィングに影響を受けた彼を意識していたようにおれは感じました。 『ねじまき鳥クロニクル』 とか、 それっぽくないすか? 語り口についてはそうだけれど、 でも、 都合の悪いことに向き合える作家は、 この国にはそんなにいないような気がします。 だからこその
骨の袋
連載 第83回
