ソイにしてからずっと胃腸が気持悪いし、 髪はパサつき爪は割れて治りかけてたアトピーも悪化した。 倍に値上がりして10年前の2kgのWPIより高額になった激安WPCを籠に入れたすぐあと、 店長の名札をつけた若い男が棚の値札を3倍に貼り替えた。 いまの値段はどちらですかと尋ねたら、 きょうはまだ古い値段で買えます、 すみませんすみませんと怯えたように何度も頭を下げられた。 気の毒なことをした。 悪いのはおれらから搾取する富裕層と政治家どもだ。
若い頃に12時間交代の工場勤務をしてからずっと不眠に悩んでいる。 症状がひどい夜に若者向けの漫画を読んでしまう哀しい老人だ。 年収200万なので普段は無料アプリやWeb連載で読むが単行本でしか読めない作品もある。 先日はさのさくら 『ただの飯フレです』 を大人買いした。 「社会的能力の高い若い男女が会食をする」 というただそれだけの題材を執拗に掘り下げて、 そこから登場人物たちの人間模様が浮かび上がってくる⋯⋯てな趣向。 存在は知っていたしWeb連載を追っていれば無料で読めたのだが、 社会的能力に障害があり他人と食事をできず、 社会人どころかいかなる意味においても職業人じゃないおれが関心を持つ題材じゃなかった。 がぜん興味がわいたのはその作家の読み切り短編に衝撃を受けたからだ。 何者だよとびっくりして調べたら、 関心がないので通り過ぎていた同作だった。 さらに仰天させられたことに極めてつまらないのにやけにプッシュされているのを不審に感じた別な作品の著者でもあった。 それは漫画家と編集者が打ち合わせをするだけの話で、 これが評価されて優先表示されるのは作品というよりも題材や人間性が関係者に気に入られたんだろうな⋯⋯と思っていた。 その初期作から最新短編までの飛躍があまりに大きすぎて、 中間に位置する同作に興味をそそられた。
案の定、 序盤はすごく感じが悪い。 社会的な能力が未発達な男を、 その点じゃ大差ないはずの女がなぜか高みから貶めて溜飲を下げるタイプの作風。 幼い男性が断罪されるのは当然として、 女性の幼さについちゃ受け入れない相手側が断罪されがちなのはなんでだろう。 一般にきつい体臭は女性に多いのに男性ばかり糾弾されるのと似た偏りに思える。 おれは30代前半の一時期、 長らく虐待された人間に特有の臭いでもあったのか、 ストーカー気質の女たちにとって 「イケメンには気後れするけどこの程度なら行けるやろ枠」 だったらしくて、 標的にされることが何度かあった。 断ることができなくてメンタルを削られたし、 世の中には食品と偽って毒物を飲ませたり背後から首を切断したりするような女がわりといることを思えば、 身体的あるいは生命の危険さえあった。 男の暴力に都合のいい社会だからといえばそれまでだが、 それをいえばそうした社会を隠れ蓑にする女だって少なからずいて、 男だから耐えろとか男のくせになどといった圧力もあり、 そう考えると属性で批難されるのは筋が通らない。
モヤモヤしながら読み進めると2巻の最終話にのちに反復される主題が出てきて、 そこから急に話数、 巻数を重ねるごとによくなるんで担当編集者が替わったんだと思う。 有能な社会人たちの会話から、 職業人としての人生が浮かび上がる作風の芽は、 なるほど初期作にもあったのだろうけれど、 経験が浅かったであろう若い著者を、 そこまでの作品を描けるまでに育て上げた編集者はよほど有能だったのだろうし、 そうした有能な職業人との会話 (おそらくは会食を含む) を通じて能力を高めた著者の側にも、 そりゃ気に入られて可愛がられて丁寧に育てられるわ⋯⋯と思わずプレジデントオンライン構文で感心させられるような力を感じた。 若き日のおれが何度か機会に恵まれながらプロ作家になれなかったのは、 家族に全力で潰されたのもさることながら主にクライアントに気に入られるような可愛げが足りなかったせいだ。
食の体験と感覚をその場で言葉にして共有することを執拗に重ねる一方で、 飲酒の快楽はあらかじめ共有されているのが前提とされ、 言葉にされないことが、 あたかも性的刺激からの絶頂のように 「持続した緊張感からの弛緩」 という強弱のリズムを生み出している (これは食を題材にした漫画が本質的にポルノであることから逃れられない表れでもあると思う)。 つまり味覚や食感といった体験すなわち 「本来分かち合えないはずのもの」 を共有しようとする努力の過程を、 お笑いにおける惚けの連続のような緊張感を伴う行為として定義し、 その緊張感を打開する道具 (突っ込みのような) としての酒を共有された前提の感覚とすることで、 本来断絶した男女の間柄における意思疎通の試みが描かれる (ついでにいえば第1話で去ろうとする相手に関係性の継続を強引に求めるのも、 その後全編にわたってアルコールへの耐性と欲望を強調して描かれるのも、 安全性の担保を当然のものとして無自覚に要求しつづけるのも女の側だ)。 こういう傑作を読んじゃうと、 社会人として有能であること、 社会的能力が優れていることが人間として最低限の条件だと気づかされるばかりか、 食事が人格否定と暴力の時間だった家庭で育ち、 いまだ他人との会食に苦痛しか感じない自分が、 人類として最低限の前提/共有を持ち得ぬがゆえに、 あらかじめ社会から疎外された個体である事実を、 否が応でも思い知らされる。
ひとでなしである事実をただ嘆いていても何も変わらない。 やれることを淡々とやるだけだ。 見本は2部の極小ロットにもかかわらず印刷のズレがなかった。 裏表紙を全面黒ベタにしていたら滑っていたろう。 ローラーが乗る部分を白くしてよかった。 あとはインクの乗った面とそうでない面の膨張収縮差で反りがどれだけ生じるかだ。 出版申請前にJPROを通じてAmazonに書誌情報が行ってしまうと、 業者からの連携で生成された実際の商品ページにはISBNとは異なるASINが付与され、 先に生成されたページは永遠に在庫切れになるのを忘れていた。 通常は24時間で反映された旨の通知が届き、 48時間も音沙汰がなければ差し戻される。 今回は3日が経過した時点で商品ページの表示が変わった。 「ハードカバー」 の表記が 「プリントオンデマンド (ペーパーバック)」 に修正され、 自分では入力していない商品サイズや重量も表示された。 表紙の解像度も落ちた (連携直後はLook Insideが機能するまで一時的にそのような現象が発生することがある)。 ステータスが 「販売中」 になってもついに通知はなかった。 手順をまちがえていながら受理されたのは裏表紙が書影として表示されたのに苦情をいったからだろう。 絶対に非を認めぬ方針があるらしいAmazonの担当者は、 うちには関係ないから出版に使った業者に文句をいえと返事をよこした。 その時点では出版代行業者に未申請だったのでJPROがあたかも出版サービスであるかのようないいぶりだ (Geminiの挙動を見ているとGoogleもそのように取り違えている節がある)。 実際にはすぐに対処してくれるし、 茶番を承知でこうしたやりとりをしておくと存在が認知されて申請が通りやすくなる。
著者優待が使えるようになったんでさっそく発注した。 プロテイン高騰で食費がかかりすぎていて十日も経たぬうちに給料をほぼ使い切った。 幸い友人と飲みに行く習慣を一年前にやめたので貯金にはまだ余裕がある。 見本はすでに柳楽先生となむさんに送付済。 納品されたら10人ほどに献本する。 4日には届くので5日に発送して早ければ6日にはお届けできる見込み。 当初は話題にしてほしいとの浅はかな期待があったものの、 よく考えたら売ることにそこまで執着する気持はなくなったし、 そういうのはおれには向いてない。 要するにおれは出版を口実にして、 以前お世話になった方々に連絡をとりたいだけなんだと思う。 おれみたいな異常者が他人と関わるのは、 湖に花を浮かべて遊んでいた幼女を湖に浮かべて一緒に遊ぼうとした怪物のようなもの。 だからといって他人と関わらなければ社会的能力が萎縮して認知が歪む一方だ。 怪物であることの責任は負わねばならない。 この世に生まれ落ちたからには、 そこがどんな糞溜であったところで這い上がって身を清め、 雑踏に紛れなければならないし、 相手を病気にさせずに笑顔で握手のひとつもできなければ生きていかれない。 次の小説の主題が 「それでもひとを信じる」 ということで、 まぁ戦争の話なんだけど、 おれはいまそういうことをしたい時期なのかもしれない。 10人中8人から返信があったものの、 重ねた関わりの程度によって反応が異なり、 急に距離を詰められたと感じたであろう方々は、 ページ数のせいで高額になった定価を知ってか、 無料で受け取るのは忍びない、 払いますと声を揃えた。 無視あるいは拒絶と受諾のどちらかしか想定していなかったので面食らったけれど、 考えてみりゃ、 職場での日常的なシェアと旅行のお土産と取引先への詫び品とじゃ、 お菓子の価格帯も変わってくるだろうし、 さほど親しくない顔見知りから料理や手編みの品なんかもらったら怨念がこもってそうで怖い、 なんてのもある (いまの職場に落ち着く前、 派遣先の同僚から弁当を無理強いされて腹痛を起こしたことがある)。 そういう相場や社会通念がわからないあたり、 おれの社会性には欠陥がある。 しかし自覚できるからには、 支離滅裂な家庭から着の身着のまま脱走して20余年、 追われる恐怖も忘れてようやく常識が考えられるまでに改善したってことでもある。
前述の漫画の 「ひとを諦めない」 との主題がいまの自分に奇妙に重なった。 世界の富豪や指導者が掌中の端末を用いて人心を操り、 破滅的な気候変動を激化させて戦争で大儲けするこの時代、 対話の価値を主題とする作品が描かれるのは必然なのだろう。 一方で、 搾取される側がどこまで堕ちるか高みの見物をして儲けたい、 と公言して作家から権利を奪って自殺や衰弱に追い込む営利事業から請けた仕事じゃ、 軋轢も限界もあることだろう。 門前払いされ黙殺されたおかげで数年間ずっと思い描いたパッケージで、 やりたかった配布や売り方ができるおれは逆に恵まれているのかもしれない。 Mastodonを運用しているVPSにメールサーバもろとも統合して人格OverDriveを建て直したのもそのためだ (単に金を節約したかったのもある)。 ゆくゆくはKATHY LAMやmacbessのウェブサイトみたいにしたい。 とりわけ後者は絵も音楽も20年前からファンだ。 装画の作業は思いのほか楽しかったし、 買い揃えたミリペンはまだインクが残っているので何か描いてみるのもいいかもしれない。
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