前回とりあげた 『逃亡のガルヴェストン』 と同じ題材にして、 これまた同じく人気ドラマ脚本家による作品だが、 こちらはエドガー賞を実際に獲っただけあって愉しめた。 話にも起伏があるし登場人物も必要充分な程度に活き活きしている。 父親が娘を教育する話なのだが心温まるほのぼのストーリーのパロディなのだろう。 そのあたりについてはおれの父親はフィクションではない本物のサイコパスだったし、 普通の家庭というものを知らないのでよくわからない。 たぶん健常者なら笑えるのだろう。 父の愛人と娘がはじめて心を通い合わす場面はよく書けていた。 たいして深みのある人物造形ではないが紙人形以下の 『ガルヴェストン』 よりずっといい、 少なくとも読んでいるあいだは信じられる。 プロットに特筆すべき点はない。 こういう話でこういう設定ならこういう感じだよねという印象。 しかし極めてテンポがよいので退屈しない。 おもしろく読める。 『ガルヴェストン』 のほうはお約束をただなぞりましたという感じだったけれど、 こちらは読者の期待通りおもしろく書きました、 という水準。 読んでいるあいだ期待通りしっかり愉しめて後に残らない、 というのも大切な技術だと思う。 人生のかぎられた時間をこういうのを読み棄てるのに使うのを無駄だと感じるか、 愉しく過ごせたと捉えるかはひとそれぞれだ。 といってもたいした時間は要さない。 分量も薄いし内容的にもヤングアダルトといっていい。 普段はジャックダニエルを常飲していても米やコーンスターチの入った薄いビールを飲みたい日だってあるじゃないですか。 ショットガンに乗る子、 という原題は助手席を意味するらしいがうまいことつけたものだ。 邦題の 『拳銃使いの娘』 も悪くないがギャビン・ライアルの小説を思わせるだけに少しがっかりさせられた。 登場する父親は拳銃使いではない。 ただのちんぴら強盗だ。 しかしほかの題名だったなら手にとる気にはさせられなかったろうから、 やはりうまくつけたものだと思う。
