ゼロ年代になぜかリチャード・スタークではなくウエストレイク名義の、 喜劇ではなくノワールの、 それもあまり有名ではない作品がちょっとだけ流行ったことがあった。 これもその一冊。 柳の下の三匹目といったところか。 ずいぶんちっちゃい泥鰌だ。 純粋に巨匠の手堅い職人技だけを楽しむべき小説で、 手堅い職人技のプロットは冒頭をちょっと読んだだけで展開、 構成から落ちまで、 そこで使われる手管に至るまですべて予想がつく。 ナボコフならこのプロットで傑作を書いたろう。 若い作家志望者が学ぶにはいい教材かもしれないね。 よくも悪くも読者の期待を裏切らない。 ウエストレイクのノワールと聞いて期待するものがあなたの手にするものだ。 読む前に予想するのと結果がおなじなのだから読まなくても読んだも同然。 驚きも昂奮もひねりもなく、 たいして笑えるわけでもなく、 いつもの巨匠の堅実な職能を楽しむためだけの、 そういう時間の使い方をよしとするかどうか。 おれはどうだったかって? まぁ楽しんだよ。
