信子

いやーおもしろかった! 獅子文六は女性を書くのがほんとうにうまいいつもふしぎなのだけれど時代の空気をだれよりも巧みに取り入れながらもどこか距離をおいて眺めているような超越した感じがある時代のモラルから当然のように自由ではないのに同時にそんなことはどうでもいいと思っているかのような自由さ平然と矛盾するのだこの小説の舞台や登場人物たちにしたって恋愛すら罪悪として咎め立てられるような価値観を正義としながらもその正義を説く教師たち自身がどう考えても当時のあるべき女性像とは思えないごくあたりまえの等身大の現代のわれわれとおなじような生身の女たちなのだ印象的なふたりの教え子にしてもあの時代にああいう視点でもって書けるとはそして当時のふつうのひとびとに共感をもって読ませてしまうとはどういうことなんだろう。 『坊ちゃんのやりすぎなくらいのオマージュというか古典のコード進行を借りて現代的な超絶技巧のプレイを聴かされてしまうというか看板の話はなるほどなぁと唸った屋号や筆名をどうしようかと悩んでいたところだったからねやっかいなひとたちに絡まれて筆名は泥まみれになってしまったけれど書くこと自体をやめたからそれは別にかまわない屋号はこのままにしようと腹を決めた十年これでやってきたからね信用も何もないけれど血も汗も想い出も染みついてるわけだあとこの本にしても元ネタの坊ちゃんにしても西部劇のプロットなんだよね型破りな主人公がある土地を訪れてそこの腐敗と闘って去っていくそういう意味では坊ちゃん信子もハメットの赤い収穫と似ている宇垣さんというのがどういう人物か知らなかったので調べて評価を知りなるほどと唸ったうまいね