11/22/63

意外に思うひともいるかもしれないけどおれはかれの小説にわりと影響を受けているんだよ社会病質の車に撥ねられてから這い上がって書いたドリームキャッチャーまでは大半の長編は読んでいた (『呪われた街だけは地元図書館に収蔵された文庫本があまりに多くの利用者に読まれて不潔な状態だったので読んでいない)。 かれの本は先行作品への言及が必ずあってジョン・アーヴィングについて触れられている作品はたいがい好みだこの本もそうなのだけれどどちらかといえばアーヴィングよりジャック・フィニイやリチャード・マシスンといった50年代SF小説の古典を連想したのんびりした当時の空気感や郷愁それでいてどこか抑圧された野卑な感じが似ている日本でいえば西岸良平理想化されたファンタジーとしての映画版別にそれもきらいじゃないとちがって原作には雑な社会の残酷さが見え隠れする青少年による兇悪犯罪の発生率が高かったりその被害者があべこべに批難されて村八分にあったり性暴力の被害者が加害者とむりやり結婚させられたりした時代世の中のそうした側面を愛らしい作風でありながら西岸良平は隠していないホラーの大家による本作品でも同様で懐かしみながらも白人男性にとっての牧歌的な時代とはどういうことかちゃんと書いてあるだからこそバージニア州マディソン郡の教育委員会が骨の袋』 『ITとともに公立高校の図書館から排除したんだろう有色人種が読む分には若干のホワイトウォッシュ感は否めないけれど難癖をつけたい感じではなくむしろ付け焼き刃ではない筋の通った信念が感じられて好感が持てる)。 ディケンズの小説がしばしばそういわれるように本作でも悪役がステロタイプだと批難されているようだけどわかってないなと思う本物の社会病質ってこうなんだよそこには何か理屈では説明できない邪悪なものがあって普通の人間とはちがうんだまるでかれの小説に出てくるそれみたいにね大統領が暗殺されない時間線で世界が余計にひどいことになる話は英国にも米国にもミステリにもSFにも属せない居心地の悪さが語られるスラディック遊星よりの昆虫軍Xを連想したでもそれが主題かといえばぜんぜんそんなことない販促用にあらすじを大雑把に説明するなら世界を救うために過去に遡ってケネディ暗殺を防ぐ話ってことになるんだろうけれど実際にはそれは重要ではないかつて高校教師だった偉大な作家が当時を懐かしむ恋愛ファンタジーなんであって実際の主題はDVを人間性がいかに克服するかってこと額面通りに受けとってサスペンスを期待しても裏切られはしないけどどちらかといえばそれは口実にすぎず読者だって了解しているのに、 「本筋からの逸脱を読者にたいして後ろめたく感じるかのような弁解がましいところが多々あるいいんだよ偉大なる父にして王よあなたのいいたいことはわかってるこれを読ませてくれてありがとうSFで時間旅行といえばたんぽぽ娘を引き合いに出すまでもなく恋愛だよねそしてあなたが過去のアルコール中毒で家族にどれだけ負い目を感じはかりしれない感謝をしているか伝わってくるあるいはこれはある特定の世代の米国白人男性にとって国というよりも家族の歴史の物語なのかもしれない