闇の中の言葉

おれの視点はおれの言葉にしかないそこにはいかなる汎用性も欠如しているそれこそがおれの本を売る上での最大のハンディキャップだったほかのどれとも区別のつかないものなら企業が扱えばいいおれは自分の売り方を見つける。 「そこにしかない言葉がなければ生きられない人間のためにそいつが闇の中で息をつくために

わかりにくいもの汎用性のないものを売るテンプレートは存在しないどこにもないものは創造するしかない非効率的だ企業は効率と利益を追求する社会的義務がある見返りの保証がない博打にコスト手間時間はかけられない。 「ずっと以前からありふれていて理解され受け入れられているもの手堅いやり方で再生産しつづけるしかないひとも言葉もどう編んでどう見せてどう広めるかもすべて既存のテンプレートから出発してそこに綺麗に還元できるものでなければならない慣習で是とされた視点しか許されない力のあるもの手堅く広まっているものを無条件で肯定して、 「わかりにくい個別の事情を孤立に追いやらねばならない

しかし他人にはなれないこれまでにもあったようなものを書くこと読むことになんの意味も感じない社会から祝福されたひとびととそうでない人間後者はあらかじめそこに属するがゆえに罰せられるおれはそいつらのために書く言葉はそのためにある前者が何を感じ何を考えているか昆虫のように理解できない。 「そのひとだけの事情を書くのが作家なのだ

ひとをキャラで説明したつもりわかったつもりになってはいけないそれは人間性に対する冒涜だ。 「わかりにくさの孤立に寄り添い、 「わかりやすさの暴力に抗うのが作家なのだそれぞれのわかりにくさに寄り添わなければ書く意味がないあえて無視するのであれば明確な意思による決断でなければならない聞き入れてはいけない事情受け入れてはいけない人格というのも確かにあるそれを聞き入れるのはそのひと以外の事情やわかりにくさを無視し蹂躙することになる作家は暴力を選び取らねばならないどこに立つべきなのかを