ポール・オースターはおもしろいものとつまらないもの、 両極端な本をほぼ交互に書く作家だとずっと前から思っていた。 『偶然の音楽』 なんかどこでひねるのだろうと期待させたままついに一度もひねらずただ一直線につまらないまま終わる。 今回の本も書評を読むかぎりでは冴えない印象だったので期待せずに読んだ。 予想外におもしろかった。 でも 『ムーン・パレス』 『幻影の書』 『ブルックリン・フォリーズ』 のようなおもしろさではない。 『ミスター・ヴァーティゴ』 や 『リヴァイアサン』 のようなおもしろさでもないけれど、 不穏な感じは似ているかもしれない。 不穏な感じで言えばむしろつまらないはずの 『偶然の音楽』 のそれをちゃんと書き切ったような印象で、 つまらないほうの彼のしっかり進化したバージョンというか、 これまでの彼とは一風異なるおもしろさがあった。 『アーダ』 かと思えば 『ロリータ』 になり唐突に 『トカトントン』 で終わる。 呆気にはとられるけれども計算され尽くした無駄のないつくりで、 何より物語のおもしろさに引き込まれる。 何を考えているかわからない他人の怖ろしさ、 不条理にはじめて説得力が加わった気がする。
