自分自身の主になる、 とはいかなることか。 理想主義を叫ぶ者、 政治や商売に野心を抱く者。 世の価値観が一変したことで、 登場人物はだれもが 「自分自身の主」 になろうとして迷います。 一発の銃声ではじまった物語は大地震で幕を閉じます。 失恋と大地震のショックでわれに返った主人公が、 最後に選んだ答えは、 うわついた夢に惑わされず、 地に足をつけて暮らすことでした。 原爆も強盗のピストルも等しく人生へのテロだという視点、 世相に惑わされてうわついた夢を見る愚かしさ (政治や商売や宗教で一山当てようとしたり、 非現実的な女性を追い求めたり)、 「自分自身の主」 という概念。 当時の読者をただ愉しませるためだけに書かれたであろう言葉に、 意外に含蓄があります。 ひとを見て描き読者を愉しませるのが案外、 文学の本道かもしれません。
